預金総額では三菱UFJ銀行を抜いて国内最大の残高を誇る
アラカンが保有している銘柄分析の第47回は、ゆうちょ銀行(7182)です。
- 預金総額では三菱UFJ銀行を抜いて国内最大の残高を誇る
- 見事IPO当選(?)で購入も、その後株価は低迷したまま
- 2021年3月期の当期純利益はマイナス1.2%の2700億円と700億円上方修正
- 株主還元方針通り前年同額50円配当維持も、期末一括に
- ゆうちょ銀行の銘柄分析をしてみます
- 高配当利回りは維持しつつも、稼ぐ力が弱い企業体質のまま
郵政民営化関連6法公布による郵政民営化の準備にともない、2006年(平成18年)9月1日に準備会社として株式会社ゆうちょが設立し、翌2007年10月1日に株式会社ゆうちょ銀行に商号変更して発足しました。ここら辺の経緯は一連の“小泉劇場”によって誕生した経緯を昨日のことのように思い出されます。
ゆうちょ銀行は、日本郵政公社で郵便貯金が取り扱ってきた商品・各種サービスが名称変更されたうえで事実上引き継がれていますが、ゆうちょ銀行によって提供されているサービスは郵便貯金法に基づく「郵便貯金」ではなく、銀行法第4条第1項の免許を受けたものとみなされたこと(郵政民営化法第98条1項)によって、「預貯金」に準拠した商品となったそうです。
また、ゆうちょ銀行は日本郵政などと異なり特殊会社としての設立形態をとらず、法文上は郵便貯金銀行と表現されていて、貯金残高約180兆円と、三菱UFJ銀行の預金残高約149兆円を抜き、預金総額で国内最大の残高を誇っています。(数字は2018年9月30日現在。2020年9月末では187.4兆円です)
都市銀行には含まれていないものの、みずほ銀行以外で全国47都道府県すべてに店舗(支店・出張所)を有しているのはゆうちょ銀行のみで、2011年10月27日に全国銀行協会に「特例会員」として正式に加盟してます。なお、全国2万4,000か所あまりに上る郵便局内での窓口業務は日本郵便に委託し、委託先の郵便局(簡易郵便局を含む)の貯金窓口は、ゆうちょ銀行の代理店(銀行代理業務・金融商品仲介業務)として業務を行っているそうです。
見事IPO当選(?)で購入も、その後株価は低迷したまま
2015年11月4日に持株会社の日本郵政株式会社とともに東京証券取引所第一部に上場し、日本郵政株式会社の保有する株式の11%が市場に売却された。アラカンはIPOに見事当選(?)し、売り出し価格1400円で100株だけですが、購入し現在もホールドしてます。
会社概要(楽天証券より)
ゆうちょ銀行は銀行業に従事する日本会社である。【事業内容】同行は、銀行業のみを単一セグメントとして、預入限度額内での預金業務、シンジケートローン等の貸出業務、有価証券投資業務、為替業務、国債、投資信託及び保険商品の窓口販売、住宅ローン等の媒介業務、クレジットカード業務などを営む。同行の主な事業として、資金調達、資産・負債総合管理、手数料ビジネスを含む。
2021年3月期の当期純利益はマイナス1.2%の2700億円と700億円上方修正
ゆうちょ銀行の業績ですが、11月13日に、2021年3月期第2四半期の決算が発表されました。中間期の経常利益は1702億円と前年同期(2011億円)比マイナス14.2%でした。中間純利益は1242億円と前年同期比マイナス14.2%となってます。
新型コロナウイルスの影響があったと思われますが、通期予想では、経常利益が3750億円と前年同期比マイナス1.0%、当期純利益予想は2700億円と、前年同期比マイナス1.2%を見込み、中間決算期より大幅改善しそうです。これは、当初予想より経常利益が1000億円、純利益が700億円上方修正されたことによります。これは資金収支等が増加したことによるとのことで、ゆうちょ銀行が保有している有価証券中の投資信託の分配金が、前年対比で大きく増加する想定とのことにて、世界的な株価上昇の恩恵を受けるということでしょうか。ゆうちょ銀行自体の株価はパッとしないままではありますが…。
「会社四季報」直近号の解説記事を紹介いたします。
【反 落】手数料は為替、決済が堅調。ATMもファミマ向けが貢献。ただ、対面営業鈍化で投信販売後退。低金利続き国債運用厳しいうえ、海外運用も出足の投信分配金大幅減が痛い。経費抑制でも経常益反落。
【攻 勢】ゆうちょペイの加盟店開拓進む。払込票の支払い機能やキャンペーンでの利用者拡大企図。郵便局での投信販売は信頼回復に向けた業務運営開始の方針。
株主還元方針通り前年同額50円配当維持も、期末一括に
ゆうちょ銀行は高配当利回り銘柄として知られてます。2017年~2020年まで4期連続年間50円の配当を維持しています。2021年3月期は当初予想では金融市場の先行き不透明さから期末配当予想を未定としていましたが、通期業績予想を上方修正したことで、中間配当ナシで期末に前年同額50円を発表しました。これは同社の株主還元基本方針による1株あたり配当金50円を目指す(2020年度末までの基本方針ではありますが…)に沿った配当政策となりました。
そんな、ゆうちょ銀行を、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」基づいて各指標をみていきたいと思います。
ゆうちょ銀行の銘柄分析をしてみます
まずは、私・アラカンの「高配当銘柄ポリシー」から
(このあたりの考え方は公認会計士・足立武志さんが記した著書『ファンダメンタル投資の教科書』を参考にしてます。よろしかったら、ご一読ください。)
銘柄ポリシーに沿って、各項目をみてみます。
1、売上推移とEPS
経常収益の2020年3月実績は1兆7995億円(前年マイナス2.41%)、経常利益は3791億円(前年プラス1.38%)、当期純利益は2734億円(前年プラス2.72%)でした。
中間期決算での2021年3月期の修正通期見込みは、当期純利益は前年比マイナス1.26%の2700億円を見込んでます。EPSも前期マイナス1.26%の72.02円です。当初想定してよりは悪くない数字で着地しそうです。評価〇
2、営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローはやはり凹凸が激しいです。2020年3月期はプラ転で2兆9359億円でした。評価△
3、配当性向
配当性向実績は、1株配当年間50円を維持してますが、60~70%台と高止まりしてます。2020年3月期の実績は68.56%でしたが、2021年3月期の予想EPSは72円ですので、年間配当50円通りですと、配当性向は前年とほぼ変わらない69.44%を見込みます。
評価△
4、ROEとROA
ROEは2021年3月予測値で2.44%(2020年3月実績値3.04%)、ROAは2021年3月予測値で0.18%(2020年3月実績値で0.32%)でした。金融業界は総資産が大きくなりがちです。2020年度は210兆円を超えてます。ただ、ROEもROAも基本低空飛行のままなので、“稼ぐ力”は低い企業だと思われます。
評価△
5、PERとPBR
PERは11.58倍、PBRは0.29倍と割安な水準です。株価が低迷したままなので、割安度は継続中です。
評価◎
6、自己資本比率
自己資本比率は2020年3月実績で4.3%と低数値ですが、ここ数年大きな変化はありません。三菱UFJフィナンシャルグループの評価でも述べましたが、ただ、銀行業にとって重要な資金量は187兆4800億円と潤沢です(会社四季報より)。なお、国際統一基準であるBIS規制上での自己資本比率〈国内基準〉は15.73%で最低基準8%を大きく上回っています。
評価〇
7、有利子負債倍率
有利子負債比率はマイナスです。預金量が国内最大で、かつ現金等が2020年3月期で51兆円あります。評価◎
8、利益剰余金÷総資産
利益剰余金を総資産で割った数字は1.22%と低い数字です。ただ利益剰余金は2兆円を超えて積み上がってきてます。これも総資産額が大き過ぎることによる数値ですね。
評価△
最後に配当利回りは
配当は上記したように、2021年3月期は前年と同じ年間50円配当を見込んでますので、配当利回りは5.92%になります。株価も低迷したままですので、配当利回りは変わらず高い銘柄です。ただ、今期は中間配当ゼロ円で期末配当一括50円なので、2021年3月までホールドしていないと年間配当を得ることはできません。
高配当利回りは維持しつつも、稼ぐ力が弱い企業体質のまま
さて、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」に基づきゆうちょ銀行を分析してみました。
ゆうちょ銀行はIPO当選で購入した銘柄で、上場直後に高値1788円を記録した後、株価は1000円を切り800円前後を往ったり来たりと低迷中の銘柄です。
高配当銘柄でしたので、現在もホールドしたままにしてましたが、売り出し価格1400円を目指すどころではない状況が続いていて、半ば塩漬けに近い状況のままで、売り時を逸した感は否めません。
今期の配当は、期末配当一括となったので、少なくとも来年3月末まではホールドのままでしょうか。
配当金額自体は維持されますし、財務的にも他のメガバンクと比較してみても、それほど悪くはないのですが、ROEとROAが低迷したままで、稼ぐ力が弱いところは魅力に乏しいなあ・・・と感じてしまいます。
2021年4月以降に塩漬けのままか、もしくは損切りか判断をすることになりそうです。
それでは、また。