国策企業から民間企業に変貌し、愛称「J-POWER」に
アラカンが保有している銘柄分析の第23回は、電源開発(9513)です。
- 国策企業から民間企業に変貌し、愛称「J-POWER」に
- 国内に60か所以上の発電所を持つ一方で海外事業展開も活発
- 地域電力会社とは一線を画し、電力卸が主力事業
- コロナ禍で第1四半期は低調も、通期見込みはトントン。配当75円も堅持
- 電源開発の銘柄分析をしてみます
- 固定資産が多く財務万全ではないが、割安局面で高配当も維持
電源開発は、第二次大戦後、全国的な電力不足を克服するため、1952年7月に成立した「電源開発促進法」に基づいて同年9月に設立された特殊会社でした。市場への配電は行わず、まず大規模水力発電の開発に取り組みました。また電源開発は当時斜陽化していた国内炭鉱産業支援のため、国内炭専用の火力発電所の建設、海水揚水発電所等の実証試験プラントや海外協力事業を積極的に行うなど、国策的性格が強い事業を行ってきた歴史をもってます。
のち、特殊法人合理化の中で、2003年に電源開発促進法を廃止、2004年10月6日に東京証券取引所第1部に上場し、電力会社および政府出資の民営化ファンドの保有株式の全てを売却してます。また合わせて愛称を「でんぱつ」から「J-POWER(ジェイパワー)」に変更しました。
国内に60か所以上の発電所を持つ一方で海外事業展開も活発
現在では、日本国内に水力、火力合わせて60か所以上の発電所を有し、発電能力は旧一般電気事業者(10電力会社)以外としては突出しており、旧一般電気事業者と比較しても四国電力などを抜き東北電力に匹敵してます。ただ配電は変わらず行わず、電力卸を主力としてます。
会社概要(楽天証券より)電源開発グループは、主に、水力、火力、風力などグループで保有する発電所による発電事業を行う他、送電事業として保有する送・変電設備により、一般送配電事業者の電力託送を行う。【事業内容】4つの事業セグメントにより構成される。電気事業は水力発電、火力発電及び託送事業を行う。また、子会社及び関連会社は風力発電事業、火力発電事業を行う。電力周辺関連事業は、発電所等の電力設備の設計・施工・点検保守・補修、燃料や石炭灰に関する港湾運用、炭鉱開発、石炭の輸入、バイオマス燃料の調達・製造、厚生施設等の運営、電算サービスの提供等を行う。海外事業は海外における発電事業及びその関連事業、海外におけるエンジニアリング・コンサルティング事業等を行う。その他の事業は保有する経営資源、ノウハウを活用し、国内での廃棄物発電、熱電併給システム事業等の新たな電力事業、環境関連事業、情報通信事業、国内におけるエンジニアリング・コンサルティング事業、石炭等販売事業等を行う。
地域電力会社とは一線を画し、電力卸が主力事業
そんな電源開発ですが、アラカンは高配当銘柄として、以前より気になっている存在でした。
電力関係銘柄としては、沖縄電力(9511)をSBIネオモバイル証券の一株定期買い付け銘柄としてポートフォリオに組み入れていますが、地域電力会社とは一線を画す電力卸を主力とする電源開発についてもリサーチをしてみました。
「会社四季報」直近号の解説記事を紹介いたします。
解説記事【減額】石炭火力2基が稼働し供給力拡大。だが、コロナ禍による卸電力価格低下想定以上。石炭価格下落で海外子会社利益も縮小。営業益下振れ。営業外の為替差益消滅。海外石炭火力などの減損特損見込まず。
コロナ禍で第1四半期は低調も、通期見込みはトントン。配当75円も堅持
コロナ禍でも電力は安定供給がマストですので、影響は軽微かと思っておりましたが、第1四半期の決算短信によると「電気事業の販売電力量は増加したものの、火力の燃料価格の低下や電力市場価格の下落等により営業収益は前年同期に対し、13.0%減少の1.879億円となりました」と説明されています。
ただ、2021年3月度の予測値は、前期ほぼ横ばいの収益予測となってます。それに伴い年間配当も前年度と同じ75円を予想されてます。
そんな電源開発を、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」基づいて各指標をみていきたいと思います。
電源開発の銘柄分析をしてみます
まずは、私・アラカンの「高配当銘柄ポリシー」から
(このあたりの考え方は公認会計士・足立武志さんが記した著書『ファンダメンタル投資の教科書』を参考にしてます。よろしかったら、ご一読ください。)
銘柄ポリシーに沿って、各項目をみてみます。
1、 売上推移とEPS
営業収益、営業利益ともは2021年3月期は前年より微増見込みです。営業収益は直近10年で1.39倍、営業利益も1.7倍増加してます。EPSは凸凹はありますが、基本上昇トレンドです。営業率は2021年3月予想値は9.29%ですが、過去10%超えの年度もあり、なかなか稼ぐ力が大きい企業だと思われます。評価〇
2、営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは一貫してプラス続きで、評価◎
3、配当性向
配当性向実績は、2020年度は32.47%でした。理想的な水準です。評価◎
4、ROEとROA
ROEは2021年3月予測値は6.1%、ROAの2021年3月予測値も1.68%と低目の数字です。いずれもターゲットラインには届かず。評価△
5、PERとPBR
PERは6.32倍、PBRは0.39倍と、お買い得な水準といえますね。評価◎
6、自己資本比率
自己資本比率は28.86%とターゲットラインである40%に届いていません。電力事業者は全体的に自己資本比率が低めです。関西電力21%、中部電力34.4%、沖縄電力37.7%etc。電力施設を構築、維持するのに相当な投資が必要だからでしょうか。貸借対照表をみても固定資産が他業界と比べても、かなり大きくなってます。業界の宿命だと思われます。評価△
7、有利子負債倍率
有利子負債倍率は2.17倍です。固定資産をみれば相応な数字にはなりますね。3.5倍を超えると危険水域といわれますので、まだまだ余裕はあります。評価△
8、利益剰余金÷総資産
利益剰余金を総資産で割った数字は63.7%とターゲットラインを超えています。利益剰余金も順調に増加してます。評価◎
最後に配当利回りは
配当は上記したように、2020年3月実績では年間75円の配当を出してます。2021年3月期予想も前年同額75円を予定してます。ここ10年間で5円じか増配してませんが、7年間70円配当を続け後、75円を3年間続けてます。安定高配当銘柄でしょうか。直近の配当利回りは4.62%を示しています。2015年~16年にかけては4000円台の株価でした。配当が高値どまりのまま株価が1600円台ですから、配当妙味ありますね。
固定資産が多く財務万全ではないが、割安局面で高配当も維持
さて、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」に基づき、電源開発を分析してみました。
電力施設の設営、保持は相当な費用がかかりますので、どうしても固定資産が増えてしまいがちですね。そういった意味では財務上では万全とは言い難いですが、インフラ企業の宿命でもありますし、海外進出も積極的な企業でもありますので、いきなり会社が傾くということは考えにくい安定型企業だと感じてます。
アラカンとしては、低PBRで買い得な銘柄と感じ、9月末の権利確定前に100株購入しました。高配当を当面は享受していこうと考えてます。
それでは、また。