明治時代初期に創立し、海外進出のさきがけとなった総合商社
アラカンが保有している銘柄分析の第35回は、三井物産(8031)です。
- 明治時代初期に創立し、海外進出のさきがけとなった総合商社
- 7つの事業セグメントに分散も、金属資源とエネルギーで75%の利益シェア
- 2021年3月度はコロナ禍で、前年利益マイナス50%を見込む
- 中期経営計画実行中の2023年までは年間配当80円を死守
- 三井物産の銘柄分析をしてみます
- 年間配当80円を狙いに株価の推移を睨みながら投資を検討するのも一考かと
三井物産は、三井グループの大手総合商社。三井不動産、三井銀行(現:三井住友銀行)と並ぶ『三井新御三家』の一つです。日本初の総合商社として、歴史上、まだ「商事会社」という日本語すら無かった明治初期に、あらゆる産品の貿易を手掛け、世界に類を見ない民間企業として発展し、後に「総合商社」と称される企業形態の原型を造ってきました。
源流は、明治初期外国の商館に牛耳られていた貿易を日本人の手に取り戻そうと、井上馨や益田孝らによって設立された先収会社です。その後、井上馨の政界復帰に伴い、益田孝らが三井家の支援を得て先収会社の志を引き継ぎその商権等を元に旧三井物産が1876年(明治9年)に設立されたことから現在に至ってます。
明治時代の日本企業による海外進出は、まず三井物産が進出し、日本郵船が航路を開き、横浜正金銀行(現:三菱UFJ銀行)が支店を出すと言われ、日本の外交官から「公館(大使館・領事館)無けれど物産あり」と言われるほど、官民を問わず、日本の組織としていち早く、世界の辺境地域へ進出していたのですね。
そんな海外進出の長い歴史もあって、現在でも鉄鉱石、原油の生産権益量は商社の中でも群を抜いています。
7つの事業セグメントに分散も、金属資源とエネルギーで75%の利益シェア
総合商社らしく事業領域は幅広く、7つのセグメント、およびその他で構成されてます。
金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進の7つとその他に分類されます。
トヨタグループの創設者である豊田佐吉の自動織機製造の資金・海外展開面で支援したことから、同グループとの繋がりも深く、現在もカナダや中南米の一部の国におけるトヨタの販売会社に出資する等の関係を継続しています。
また、セブンブン&アイ・ホールディングスとも親密で、物流やショッピングセンターの開発などの面で提携していますが、株式を1.8%保有しているに過ぎず、三菱商事のローソン、伊藤忠商事のファミリーマートのように連結売上に組み込まれるような展開ではありません。利益貢献という意味では金属資源とエネルギーの2セグメントで75%を占めています。
会社概要(楽天証券より)
三井物産グループ、及び連結子会社は、総合商社である同社を中心として全世界に広がる営業拠点とその情報力を活用し、世界各地の販売先及び仕入先に対する多種多様な商品の売買及びこれに伴うファイナンスなどに関与し、また、国際的なプロジェクト案件の構築などに取り組む。【事業内容】鉄鋼製品、金属資源、機械・プロジェクト、化学品、エネルギー、食料・リテール、コンシューマーサービス・情報産業などの分野で商品の販売、輸出入・外国間貿易及び製造を行うほか、リテール、情報通信、技術、輸送、ファイナンスなどの総合的なサービスの提供、更にはエネルギー・鉄鋼原料などの資源開発事業、また、IT、再生可能エネルギー、環境関連事業に代表される新分野への事業投資などの幅広い取組を展開する。同社は商品別セグメントとして7セグメント及び地域別セグメントとして3セグメントの計10報告セグメントに分類する。鉄鋼製品セグメントは、インフラ鋼材、自動車部品、エネルギー鋼材他を提供する。金属資源セグメントは、鉄鉱石、石炭、銅、ニッケル、アルミニウム、製鋼原料・環境リサイクル等を提供する。機械・インフラセグメントは、電力、海洋エネルギー、ガス配給、水、物流・社会インフラ、自動車、産業機械、交通、船舶、航空等の商品とサービスを提供する。化学品セグメントは、石油化学原料・製品、無機原料・製品、合成樹脂原料・製品、農業資材等を提供する。エネルギーセグメントは、石油、天然ガス、LNG、石油製品、原子燃料、環境・次世代エネルギーを提供する。生活産業セグメントは、食料、繊維、生活資材、不動産、ヘルスケア、アウトソーシングサービスを提供する。次世代・機能推進セグメントは、アセットマネジメント、リース、保険、バイアウト投資、ベンチャー投資、商品デリバティブ、物流センター、情報システム等についての事業を展開している。米州セグメントは、飼料添加物、化学品タンクターミナル、鉄鋼製品を提供する。欧州・中東・アフリカセグメントは、化学品、鉄鋼製品、機械を、アジア・大洋州セグメントは化学品、鉄鋼製品、食糧・食品を提供する。
2021年3月度はコロナ禍で、前年利益マイナス50%を見込む
明治初期以来の長い伝統をもち、特に金属資源とエネルギー分野で強みを持つ三井物産ですが、新型コロナウイルスの影響を受け、2021年3月期第1四半期利益は前年同期比でマイナス50%の626億円(前年1250億円)の着地でした。通期利益見込みを1800億円と前期比マイナス54%を見込んでいます。
「会社四季報」直近号の解説記事を紹介いたします。
【後 退】金属は石炭価格下落が響く。エネルギーも油価低迷でLNGが弱い。コロナ影響で自動車向け鉄鋼製品が細る。ただ、石油・ガスの減損が剥落。米OSIソフトの持分売却し、前号比で最終減益幅縮小。
【エネルギー】米キャメロンLNGの第3系列が生産開始。米国の燃料電池車向け水素ステーションの運営企業に出資。約3割出資の福島ガス発電所が運転を開始。
中期経営計画実行中の2023年までは年間配当80円を死守
三井物産は、配当性向ではなく、基礎営業キャッシュフローの向上を通じた配当の安定的向上、自社株買いを含む株主還元の引き上げを図っています。現在、2023年までの中期経営計画実行中で、中計期間中は80円の配当を設定しています。利益が前年比50%を超える環境下で増配を期待することは難しいと思われますが、年間80円の配当を2023年までは死守することは、高配当株投資家としては心強い限りです。
そんな三井物産を、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」基づいて各指標をみていきたいと思います。
三井物産の銘柄分析をしてみます
まずは、私・アラカンの「高配当銘柄ポリシー」から
(このあたりの考え方は公認会計士・足立武志さんが記した著書『ファンダメンタル投資の教科書』を参考にしてます。よろしかったら、ご一読ください。)
銘柄ポリシーに沿って、各項目をみてみます。
1、売上推移とEPS
売上は2019年、20年度は6兆円台でした。2021年度の最終売上見込みは発表されていません。一方、利益(IFRS)は上記したように1800億円と前期マイナス54%を見込んでいます。EPSも同様にマイナス52%の106.94円を見込んでいます。コロナ禍で、かつ主力の金属資源とエネルギーの価格下落が大きな減益要因です。評価△
2、営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは一貫してプラス続きです(2020年3月期は5263億円)。ちなみに投資活動が活発なのでフリーキャッシュフローも、2020年3月期で3411億円あります。
評価◎
3、配当性向
配当性向実績は、配当金に勘案していないとの方針ですが、ここ4年は20%~30%台と余裕がありますね。ちなみに2016年は赤字決算だったので指標はありません。評価◎
4、ROEとROA
ROEは2021年3月見込みは4.65%、ROAの2021年3月見込みは1.57%です。ROEは10%を超える年度もあるのですが、出入りが激しいですね。ターゲットラインに届いていないので、評価△
5、PERとPBR
PERは7.66倍、PBR0.77倍と、非常に割安な水準です。評価◎
6、自己資本比率
自己資本比率は32.3%とターゲットラインに届かず。昨年まで9年連続30%台前半の数値と安定はしています。評価〇
7、有利子負債倍率
有利子負債倍率は1.28倍。伊藤忠商事と似通った数値で、積極的な投資活動のため、有利子負債は相応にあります。ちなみに流動比率は132.19%です。評価△
8、利益剰余金÷総資産
利益剰余金を総資産で割った数字は28.4%とターゲットラインに届かず。ただ利益剰余金は3兆円を超えています。評価△
最後に配当利回りは
配当は上記したように、2023年度までは年間配当80円を下限とすることを表明してますので、2021年3月期が予想通り年間80円とすると配当利回りは4.49%となります。十分に高配当銘柄といえます。配当金も下限設定をしているので、安心して投資できる銘柄といえます。
年間配当80円を狙いに株価の推移を睨みながら投資を検討するのも一考かと
さて、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」に基づき、三井物産を分析してみました。
総合商社はどうしても投資比重が高くなってしまうので、有利子負債が高くなりがちですね。三菱商事、伊藤忠商事と並べてみて、どの会社も財務的には優秀とはいえない数字になりますね。三井物産の場合、伊藤忠商事と比べると資源比重が高く、その価格動向に左右されやすく、数字のブレが大きくなりがちです。ROEのブレが大きいのが気になるところです。ただ、1兆円を超える現金等も保有してますし、利益剰余金も3兆円台と、心配するレベルにはないと判断いたします。
また、株主還元の意向が高く、中期経営計画中の2023年までは年間配当80円を下限とする方針を打ち出していますので、安心度は高いかと思われます。
りそうです)
。
アラカンとしては、当面はSBIネオモバイル証券の定期買い付け銘柄として一株づつ買いためているところですが、株価の状況をみて単元化することもありかなと考えてます。
それでは、また。
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