中小企業を主な顧客として「少額」契約をコツコツ積み上げてきてます
アラカンが保有している銘柄分析の第43回は、リコーリース(2923)です。
- 中小企業を主な顧客として「少額」契約をコツコツ積み上げてきてます
- 同業企業「みずほリース」と業務提携を発表
- リース業界の売上ランキングでは第10位
- 2021年3月度は売上、営業利益、当期純利益とも微減の見込み
- 安定配当の継続を表明。21年連続増配の年間95円を予想
- リコーリースの銘柄分析をしてみます
- リース会社分析は難しいですね。株主優待サービスもあります
リコーリース株式会社は、リコー製品の販売支援会社として1976年に設立され、リコーの光学、OA製品のリース、ビジネスローン、集金代行サービスなど各種金融サービス事業を提供するフィナンシャルサービス企業です。事業基盤は中小企業向けの小口リース・割賦事業で、リコーグループ唯一の国内金融子会社として、資金面・人的面でもリコーグループとの密接なつながりがあります。
2019年4月に改訂された、経営理念によると
経営理念
私達らしい金融サービスで豊かな未来への架け橋となります。
基本姿勢
誠実な事業活動を通じて持続可能な地球社会の発展に貢献します。
想定を超えるサービスでお客さまと未来・社会をつなぎます。
一人ひとりが尊重しあい楽しくいきいきと働ける環境をつくります。
企業価値の増大により株主の期待に応えます。
主な事業であるリース・割賦事業については、同社HPにて、以下の説明がされてます。
当社グループでは、お客様の設備投資に関連するリース・レンタル・割賦・クレジット等の商品・サービスを「リース・割賦事業」と定義しています。主力の事務用・情報関連機器、医療機器の他新たな分野である環境関連など重点分野を定めて、分野ごとの営業戦略を展開しています。重点化することで、物件特性や業界動向に精通し、お客様のニーズに合ったサービスの提供が可能となります。これにより、効率的な営業と収益基盤の拡充を図ると同時に、物件価値の見極めや業界特有の事業性見通しによる信用リスク回避等につなげています。
また、もう1つの大きな特徴は、中小企業を主な顧客層とする40万社の顧客に、平均契約単価が210万円と「少額」な契約を行なっていることです。販売会社・販売店に高付加価値のサービスを提供する「販売支援リース」と効率化された「業務処理の仕組み」が当社グループ最大の強みとなっています。その結果、当社グループの主要なお客様である中堅・中小企業の信用リスクを小口分散化させ、優良な営業資産を形成しています。このリスク分散が図られた高い収益性が評価され、高格付を維持し、安価で安定した資金調達を実現しています。
当社グループでは、「販売支援リース」「重点特化戦略」「小口分散による優良な資産」「高格付」を重要な鍵として経営資源を有効に活用し、収益力の強化に努めています。
(同社HPより)
同業企業「みずほリース」と業務提携を発表
同じリース会社でも、例えば航空機リース等の大型案件を手掛けているオリックスや三菱UFJリースと比べると、中小企業を中心とした小口案件をコツコツと積み上げてきているリース会社ですね。リコーグループ企業のネットワークを生かして、中小企業へのコピー機案件等から食い込んできたのでしょうね。現在では900億円を超える時価総額の企業に成長してます。
リース会社にとって重要な格付けについては、直近の格付けとして国内格付け機関の評価はAクラス以上、世界的な格付け期間スタンダード・プアーズからもBBB+の評価を得てます。
なお、同業企業であるみずほリースが、2020年3月にリコーリースの株20%を保有し持ち分法適用会社としました。同業界での業務提携ですね。
みずほリース、リコーリースに出資 リコーから約2割を取得
日本経済新聞 2020年3月9日記事より
みずほリースは9日、リコーリースに約20%を出資し、持ち分法適用会社にすると発表した。4月下旬にも親会社のリコーから約368億円でリコーリース株を取得する。リコーリースも、みずほリース株の3%程度を市場などで取得する予定。3社で業務提携し、顧客基盤の拡大につなげる。
リコーリースが強みを持つ中小企業向けサービスの審査ノウハウを活用し、モノを共有するシェアリングエコノミー関連などの展開を目指す。リコーリースはリコーの連結子会社から、リコーとみずほリースそれぞれの持ち分法適用会社に変わる。
リース業界の売上ランキングでは第10位
リース業界の売上高ランキング(2018-2019年)では、オリックスが断然トップで、みずほリースは9位、リコーリースは10番目の売上規模になります。この時点のランキングで4位の三菱UFJリースと6位の日立キャピタルは経営統合することが発表されてますので、リコーリースも、もしかして…と考えたりします。
会社概要(楽天証券より)
リコーリースグループは、リースならびにリース関連のファイナンスサービスを提供する。【事業内容】2つの事業セグメントを通じて事業を展開する。リース・割賦セグメントは、事務用・情報関連機器、医療機器、産業工作機械・計測器等のファイナンス・リース、オペレーティング・リース、割賦・クレジット(賃貸取引の満了・中途解約に伴う物件売却等を含む)を行う。金融サービスセグメントは、法人向け融資・業界特化型融資・住宅ローン・マンションローン等の貸付、請求書発行・売掛金回収等の代行サービス、介護報酬ファクタリングサービス、及び住宅賃貸事業等を行う。その他は、計測・校正・機器点検等の受託技術サービス及びリコーグループ内での融資、ファクタリング、国内キャッシュ・マネジメント・システムの運営等を行う。
2021年3月度は売上、営業利益、当期純利益とも微減の見込み
リコーリースの業績ですが、2021年3月期第2四半期の決算短信によると、売上高は前年同期比プラス4.7%、営業利益はマイナス1.4%、四半期純利益はマイナス3.0%でした。通期業績予想では、売上高がマイナス0.6%の3304億円、営業利益はマイナス1.9%の167億円、当期純利益はマイナス4.5%の113億円を見込んでいます。
新型コロナウイルスの影響は相応に受けていて減収を見込んでいますが、第2Q 以降は、少しずつ業績も戻ってきているようです。減収幅も低位で着手しそうです。
通期業績は売上高がマイナス10.3%の5500億円、営業利益はマイナス15.4%の290億円ですが、当期純利益は13.4%プラスの240億円を見込んでいます。
「会社四季報」直近号の解説記事を紹介いたします。
【減 額】太陽光発電や住宅賃貸が成長。だが、コロナ禍でリース新規取り扱い減、大口含め想定超える貸倒引当発生。陣容拡充や教育、IT経費増は維持。前号より営業減益幅拡大。配当性向引き上げ連続増配。
【ESG】エネルギー、ヘルスケア、AIなど環境、社会分野に貢献するスタートアップ対象に投資枠200億円設定。生産性向上へ電子契約化やテレワーク等IT投資。
安定配当の継続を表明。21年連続増配の年間95円を予想
リコーリースは売上高も3000億円ほどで、リース業界10位クラスの企業ですが、高配当銘柄として知られていて、かつ連続増配企業としても知られています。中長期的に安定した株主還元を基本方針としており、2001年3月期から連続増配を更新中です。2021年3月度の配当は前年から5円増配の年間95円を予想してます。これで21年連続増配となります。高配当株投資家としては、実に魅力のある企業ですね。
そんなリコーリースを、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」基づいて各指標をみていきたいと思います。
リコーリースの銘柄分析をしてみます
まずは、私・アラカンの「高配当銘柄ポリシー」から
(このあたりの考え方は公認会計士・足立武志さんが記した著書『ファンダメンタル投資の教科書』を参考にしてます。よろしかったら、ご一読ください。)
銘柄ポリシーに沿って、各項目をみてみます。
1、売上推移とEPS
売上高の2021年3月予想値は前年度マイナス0.56%の3304億円、営業利益はマイナス1.87%の167億円です。
当期純利益予想値は上記したように前年度マイナス4.46%の113億円を見込んでます。EPSも似たような数値で、前年度マイナス4.23%の366.59円を見込んでます。コロナ禍ということを鑑みれば、前年マイナスですが、軽微なレベルだと思われます。
評価〇
2、営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは基本マイナス続きです。それだけみるとリコーリース大丈夫?と勘ぐってしまいますが、同業の三菱UFJリース、東京センチュリー、みずほッリースといった企業も営業キャッシュフローは軒並みマイナスです。これはリース業の特性によるところが大きく、営業貸付残高が増えていれば、貸付金が増えていくのでキャッシュフローはマイナスになりますね。一方で財務キャッシュフローは貸付残高増減の裏返しなので、貸付残高が増えていれば資金調達も多くなりプラスになります。貸付金あってこその金融業なので、この数値で問題ないと考えます。
評価〇
3、配当性向
配当性向実績は、長らく10~20%です。2021年3月度の配当性向見込みは、配当金95円に対してEPS予想値が366.5円ですので25.9%になります。まだまだ余裕ありますので、連続増配更新も期待できます。評価〇
4、ROEとROA
ROEは2021年3月予測値が6.06%、ROAの2021年3月予測値は1%と、いずれも基準値に届きません。オリックスの分析の際にも申し上げましたが、金融業は総資産が大きくなります。リコーリースも売上は3000億円台ですが、総資産は1兆円を超えてます。分母が大きくなってしまうので、特に総資産利益率(ROA)が低くなるのは致し方ないところではあります。評価△
5、PERとPBR
PERは7.79倍、PBRは0.49倍と割安な水準ですね。評価◎
6、自己資本比率
自己資本比率は2020年3月実績で15.8%と基準値を大きく下回っています。ただし、これも巨大な総資産により分母が大きくなっている事情もあります。格付け評価は上記した通りです。評価〇
7、有利子負債倍率
有利子負債倍率は貸付を増やすために有利子負債を増やす必要から4.54倍と高い水準になりあります。ただ流動比率は343.49%もあるので、短期的な支払いに苦労する水準でなないと考えます。評価△
8、利益剰余金÷総資産
利益剰余金を総資産で割った数字は14.3%とターゲットラインを下回っています。総資産の分母が大きいことが起因してますね。利益剰余金は順調に積み上がっています。
評価△
最後に配当利回りは
配当は上記したように、前年5円増配の年間95円を予想してます。現在の株価で割った配当利回りは3.18%です。なかなかの高配当銘柄の水準にはあると思います。
リース会社分析は難しいですね。株主優待サービスもあります
さて、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」に基づきリコーリースを分析してみました。
正直、リース会社は顧客に製品を貸し付けてナンボの業種ですので、メーカーやサービス業で分析した指標そのままでは全く当てはまらなくなってしまいます。
そこで、格付けや各指標の変化率、同業他社との比較で判断するしかないのですが、リコーリースは業界10位ということで、目を見張る数字ではないものの、大きくショートしそうな案件(航空機リース等)は取り組まず、コツコツと中小企業案件を積み上げてきているので、事業に安定感がありますし、コロナ禍でも小幅な減益に留まってます。
ただ、業界再編の動きもあるので、みずほリースとの業務提携は注視していく必要がありそうですね。
高配当株投資家としては、何といっても21年連続増配中というのは魅力的です。
また、株主優待制度もありますので、長期投資に向いた銘柄かなと感じてます。
アラカンとしては、当面はSBIネオモバイル証券の定期買い付け銘柄として一株づつ買いためていくつもりですが、タイミングをみて単元化することもありかなと考えてます。
それでは、また。