東京海上日動火災保険発足を起点に、M&A活発で急拡大
アラカンが保有している銘柄分析の第37回は、東京海上ホールディングス(8766)です。
- 東京海上日動火災保険発足を起点に、M&A活発で急拡大
- 2020年3月度はコロナ禍で純利益は前年比マイナス32.6%ダウン
- 株主還元意識は高く、2021年3月期は年間200円配当を予想
- 東京海上ホールディングスの銘柄分析をしてみます
- アグレッシブなキャッシュリッチ高配当銘柄
東京海上ホールディングス株式会社は、保険持株会社として、正味収入保険料、純利益において国内最大級の損害保険グループです。MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングスと鼎立していて、「三メガ損保」の一角です。傘下には東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命、日新火災海上保険などの企業が入っています、
2004年10月1日に持株会社傘下の東京海上と日動火災の合併による東京海上日動火災保険発足に始まり、2006年に日新火災保険を100%子会社化、2008年にサブプライムローン問題から弱体化した米国損害保険グループ「フィラデルフィア・コンソリデイティッド社」を買収しました。
また同年1月、日本厚生共済会(現・東京海上ミレア少額短期保険)を傘下に収めたことで少額短期保険事業に、2009年6月にはNTTファイナンスとの出資によりイーデザイン損害保険を設立し、通販型損害保険事業にそれぞれ参入していいます。
なお、東京海上日動火災保険の前身・東京海上火災保険は日本最初の保険会社(海上保険会社)として、1879年8月に設立された三菱財閥の一員でした。長らく、売上高では日本の損害保険業界トップ企業として君臨し、大学生の就職人気企業ランキングで、文系部門での第1位を長年得ていた企業でした。
一方、日動火災海上保険も1893年に東京物品火災保険として設立された歴史の深い会社で、「動産三社」の一角として、旧安田財閥に属していました。
会社概要(楽天証券より)
東京海上ホールディングスは、国内損害保険事業、国内生命保険事業、海外保険事業及び金融・一般事業を行う。【事業内容】同社は4つの事業セグメントを通じて事業を行う。国内損害保険事業は日本国内の損害保険引受業務及び資産運用業務等を行う。国内生命保険事業は、日本国内の生命保険引受業務及び資産運用業務等を行う。海外保険事業は、海外の保険引受業務及び資産運用業務等を行う。金融・一般事業は、投資顧問業、投資信託委託業、人材派遣業、不動産管理業、介護事業を中心に事業を行う。
2020年3月度はコロナ禍で純利益は前年比マイナス32.6%ダウン
東京海上ホールディングスは、2018年~20年にかけて新中期経営計画「To Be a Good Company 2020」の真っ只中にいます。「ポートフォリオの更なる分散」「事業構造改革」「グループ一体経営の強化」を重視課題として、収益基盤の確立による利益成長と株主還元水準の引き上げを目指す計画で、ROE10%以上を目指すものでした。
しかしながら、予想だにしなかった新型コロナウイルスの影響で、業績に暗雲が立ち込めました。対面営業を自粛せざるをえない環境下で保険収入の伸びは鈍化しました。同時に世界的な株価低迷の影響もあって資産運用部門も厳しい状況となります。2021年3月の第1四半期の純利益は前年マイナス12.0%、通期予測の純利益は前年比32.6%マイナス1750億円を見込んでいます。
「会社四季報」直近号の解説記事を紹介いたします。
【最終減益】新型コロナで対面営業自粛もあり、正味収入保険料横ばい。海外子会社でコロナによる支払保険金増に加え、資産運用不調が痛打。国内で自動車事故減少に伴う支払保険金減っても及ばず。最終減益。
【提 携】JR東日本と提携しMaaSの社会実装推進と保険サービス開発へ。タイムズ24と予約制駐車場サービスで提携。21年1月コロナ等感染症向け休業補償発売。
株主還元意識は高く、2021年3月期は年間200円配当を予想
東京海上ホールディングスは、高配当銘柄として知られています。
2021年3月期は予想値ですが、期末ともに100円の年間200円を見込んでいます。
同社の配当方針については
当社では、株主還元は配当を基本として、利益成長に応じて配当総額を持続的に高めてまいります。自己株式の取得は中長期的に株主価値を高める観点から、「健全性」と「資本効率」をふまえつつ、市場環境や資本水準、事業投資機会等を総合的に勘案し、機動的に実施することとしています。(以下、同社HPより)
とのことですので、業績次第で凹凸があるとは思いますが、企業の成長に即した配当は得られそうです。
なお、東京海上ホールディングスを始めとする生損保業の事業健全性を示す指標としてソルベンシー・マージン(Solvency Margin)比率があります。これは、予測を大幅に超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」のことで、ここでいうリスクとは、大災害の発生で保険金支払いが急増したり、株価暴落・為替相場の激変などのことを指します。
例えば、ソルベンシー・マージン比率が500%であれば、「全契約者すべての支払い保険金の5倍の資金が準備されている」ということになります。ソルべンシー・マージン比率が200%未満100%以上になると、金融庁から行政指導が入ります。200%を超えていれば安全だといわれています。
東京海上ホールディングス傘下の事業会社の2020年3月期中間期のソルベンシー・マージン比率は、東京海上日動火災保険は817.2%、東京海上日動あんしん生命2254.3%、日新火災海上保険1163.0%ですので、その事業健全性は十分かなと思われます。
そんな東京海上ホールディングスを、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」基づいて各指標をみていきたいと思います。
東京海上ホールディングスの銘柄分析をしてみます
まずは、私・アラカンの「高配当銘柄ポリシー」から
(このあたりの考え方は公認会計士・足立武志さんが記した著書『ファンダメンタル投資の教科書』を参考にしてます。よろしかったら、ご一読ください。)
銘柄ポリシーに沿って、各項目をみてみます。
1、売上推移とEPS
営業収益は2021年3月期が前年マイナス0.21%の5兆4654億円を見込んでます。経常利益はマイナス27.19%の2650億円、当期純利益はマイナス32.63%の1750億円を見込んでいます。EPSも似たようなトレンドで前年比マイナス32.2%の250.7円を見込んでいます。営業収益はそれほど下落していないのですが、利益ベースでみると結構な減益幅ではあります。
評価△
2、営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは一貫してプラス続きです。
評価◎
3、配当性向
配当性向実績は、ここ2年は50~60%台前後を推移してます。株主還元の方針としては
利益成長に応じて配当総額を持続的に高めているということで、配当性向は安定しない傾向にあります。評価〇
4、ROEとROA
ROEは2021年3月予想値で5.25%、ROAは2021年3月予想値で0.7%。損保業界は保険金が先に入ってくるので、利益に対して、総資産が大きくなりがちです。2020年3月実績で25兆円を超えています。ただ、新中期経営計画では2021年3月期のROE目標は10%でしたので、コロナ禍とはいえ高い数字とはいえないですね。。評価△
5、PERとPBR
PERは19.5倍、PBR1.02倍と、PERは20倍に近く、割安とはいえない水準ですね。
評価〇
6、自己資本比率
自己資本比率は2019年実績で15.9%(2020年予測値は13.4%)です。損保会社は総資産が大きくなりがちなので、あまり実態を表していない数字かもしれません。会社の安全度を図る指標としては責任準備金を総資産で割った指標の方が適切かもしれません。ちなみに2020年3月の責任準備金等は14兆2269円でしたので、総資産で割った数字は63.9%です。評価〇
7、有利子負債倍率
有利子負債倍率は0.07倍。問題のない水準ですね。評価◎
8、利益剰余金÷総資産
利益剰余金を総資産で割った数字は73.8%とターゲットライン超え。利益剰余金は優に1兆円を超えています。キャッシュ・リッチな会社です。評価◎
最後に配当利回りは
配当は上記したように、2019年度が中間90円期末90円と年間180円の実績でした。2020年度は予想値ですが、中間100円期末100円の年間200円を見込んでいます。これで9期連続の増配となります。(IR BANKの一株配当推移は、自社HPの表と数字が異なりますが、これは記念配当分が加わったものなので、ここでは社発表の配当数字で表してます)年間200円配当となると配当利回りは4.09%になります。
アグレッシブなキャッシュリッチ高配当銘柄
さて、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」に基づき、東京海上ホールディングスを分析してみました。
元々、損害保険大手2社の合併から始まったホールディングス・カンパニーですが、海外保険会社等の積極的なM&Aや、ネット専業損保会社の設立など、アグレッシブな印象をいだきます。
財務的には、金融企業の場合、自己資本比率が低くなりがちですので、通り一辺倒の評価はできないのですが、正味収入保険料が横ばいも、ソルベンシー・マージン比率も利益剰余金も余裕がありますので、大きな問題はないと思われます。
現金等も1兆円を超えています。キャッシュ・リッチな企業ですね。
アラカンとしては、現在はSBIネオモバイル証券の定期買い付け銘柄として一株づつ買いためているところですが、高配当銘柄ですので、株価の状況をみて単元化することもありかなと考えてます。
それでは、また。