ファミリーマートのTOBも成立。完全子会社へ。
アラカンが保有している銘柄分析の第33回は、伊藤忠商事(8001)です。
- ファミリーマートのTOBも成立。完全子会社へ。
- 8つの事業セグメントに分散。情報・金融や繊維などに特徴
- 2021年3月度はコロナ禍の影響で減益も、利益で商社トップへ
- 3円増配の88円配当を予想。6年連続の増配へ
- 伊藤忠商事の銘柄分析をしてみます
- 総合商社の中で配当利回りは見劣るものの健全度はピカイチ
伊藤忠商事は1858年初代伊藤忠兵衛が麻布の行商で創業したことにはじまり一世紀半にわたる歴史をもってます。現在は非財閥系の雄として、世界62ヶ国に約100の拠点を持ち、祖業である繊維の他に、食料や生活資材、情報通信、保険、金融といった非資源分野全般を強みとしている総合商社です。
各分野において国内、輸出入及び三国間取引を行っていますが、特に中国とのビジネスに強味を持っていています。また傘下にファミリーマート等の有力企業を多く抱えています。
ちなみに8月25日にファミリーマートへのTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表してます。TOBの成立により保有比率は50.1%から65.71%に高まります。残りの株式については、株式併合によって取得する予定で、株式併合が実行された場合、ファミマは上場廃止となります。
8つの事業セグメントに分散。情報・金融や繊維などに特徴
総合商社らしく事業領域は幅広く、8つのセグメントから構成されています。
繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食料、住生活、情報・金融に加え、2019年7月に新たに第8カンパニーを立ち上げています。
第8カンパニーは生活消費分野に強みを持つ伊藤忠商事らしく、市場や消費者ニーズに対応した「マーケットインの発想」による新たなビジネスの創出・客先開拓を行うセグメントで、ファミリーマートは第8カンパニーに属しています。
会社概要(楽天証券より)伊藤忠商事グループは、多種多様な商品のトレーディング、ファイナンス、物流及びプロジェクト案件の企画・調整等を行う他、資源開発投資・事業投資等の実行を通して各種機能・ノウハウ等を培い、かつ保有している。【事業内容】これらの総合力を活かし、幅広い業界並びにグローバルなネットワークを通じて、7つのディビジョンカンパニーが、繊維や食料、住生活、情報・金融等の生活消費関連分野、機械や化学品、石油製品、鉄鋼製品等の基礎産業関連分野、そして金属資源、エネルギー資源等の資源関連分野において、多角的な事業活動を展開している。繊維事業は、繊維原料、糸、織物から衣料品、服飾雑貨、その他生活消費関連分野のすべてにおいてグローバルに事業展開を行っている。また、ブランドビジネスの海外展開や、リーテイル分野でのインターネット販売等の販路展開にも取組んでいる。機械事業は、プラント、橋梁、鉄道等のインフラ関連プロジェクト及び関連機器・サービスの取扱、独立系発電(IPP)、水・環境関連事業及び関連機器・サービスの取扱、船舶、航空機、自動車、建設機械、産業機械、工作機械、環境機器・電子機器等の単体機械及び関連機材取扱、再生可能・代替エネルギー関連ビジネス等の環境に配慮した事業を展開している。更に、医療・健康関連分野において、医薬品・医療機器等の取扱や関連サービスを提供している。金属事業は、金属鉱産資源開発事業、鉄鋼製品加工事業、太陽光・太陽熱発電事業、温室効果ガス排出権取引を含む環境ビジネス、鉄鉱石、石炭、その他製鉄・製鋼原料、非鉄・軽金属、鉄鋼製品、原子力関連、太陽光・太陽熱発電関連の国内・貿易取引を行っている。原油、石油製品、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、天然ガス、電力等、エネルギー関連商品全般のトレード、関連プロジェクトの推進及び石油・ガスプロジェクトの探鉱・開発・生産業務の推進、有機化学品、無機化学品、医薬品、合成樹脂、精密化学品、電子材料等のトレード及び事業を行っている。食料事業は、原料からリーテイルまでの食料全般にわたる事業領域において、国内外で効率的な商品の生産・流通・販売を推進している。住生活事業は、住宅資材事業、紙パルプ事業、天然ゴム事業、タイヤ事業等の生活資材分野、不動産開発・分譲・賃貸・管理業や物流事業等の建設・物流分野において事業を推進している。情報・金融事業は、IT・ネットサービス事業、携帯流通及びアフターサービス事業等の情報・通信分野、各種金融サービス事業や保険事業等の金融・保険分野において事業を推進している。その他は、海外現地法人については、複数の商品を取扱う総合商社であり、主要な海外拠点において提出会社と同様に多種多様な活動を行っている。
2021年3月度はコロナ禍の影響で減益も、利益で商社トップへ
連結売上で10兆円を超え、総合商社の中では三菱商事と激しく首位争いする伊藤忠商事ですが、新型コロナウイルスの影響を特に生活消費分野を中心に受け、2021年3月期の第1四半期決算では前年同期実績よりマイナス425億円の1048億円と大きな減益となりました。ただ、通期純利益見通しを4000億円(前年実績5013億円)と見込んでいて、1Qは想定を上回る26%の進捗率だったとのことです。事業セグメントが幅広く分散されて、特に情報・金融セグメントは底堅く前年同期比61億円の利益を叩き出し利益に貢献しています。
「会社四季報」直近号の解説記事を紹介いたします。
【低 調】情報・金融はCTCなど底堅い。エネルギーはトレーディングで利幅拡大。だが、繊維、自動車関連はコロナによる販売不振が打撃。金属は前期好調の石炭が市況悪化で厳しい。最終減益。増配は継続。
【コンビニ】傘下のファミリーマートへのTOB成立、株式非公開化して意思決定の迅速化図る。都内でワーナー社などとハリー・ポッター題材のエンタメ施設を開発。
3円増配の88円配当を予想。6年連続の増配へ
伊藤忠商事は、2020年3月期第1四半期決算短信で、同年度の年間配当を88円と予想を出しています。これで6年連続の増配となります。将来的に配当性向30%台を目指すとのことで段階的な引き上げを実施するなど株主還元意識の高い会社です。
そんな伊藤忠商事を、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」基づいて各指標をみていきたいと思います。
伊藤忠商事の銘柄分析をしてみます
まずは、私・アラカンの「高配当銘柄ポリシー」から
(このあたりの考え方は公認会計士・足立武志さんが記した著書『ファンダメンタル投資の教科書』を参考にしてます。よろしかったら、ご一読ください。)
銘柄ポリシーに沿って、各項目をみてみます。
1、売上推移とEPS
売上はかなり凸凹があって2020年3月期は10兆9829億円でした。利益は国際会計基準(IFRS)を採用していて2019年~2020年は5000億円台の利益を出してました。2021年3月期は前年比20.216%マイナスの4000億円を見込んでます。EPSも利益と似たトレンドで、2021年3月期は20.02%マイナス268.39円を見込んでます。このまま予測通りに進捗すれば、利益ベースでは商社の中では三菱商事を抜いてナンバーワンになりそうです。評価〇
2、営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは一貫してプラス続きです(2020年3月期は8781億円)。ちなみに投資活動が活発なのでフリーキャッシュフローも、2020年3月期で6293億円あります。
評価◎
3、配当性向
配当性向実績は、ここ4年20%台と余裕があります。配当方針から配当性向30%台を目指すとのことで株主還元意識の高い企業といえます。評価◎
4、ROEとROA
ROEは2021年3月見込みは12.94%、ROAの2021年3月見込みは3.66%です。ROAがターゲットラインに届いてませんが、ROEが総合商社の中で10%を超えているのは評価できるところです。評価〇
5、PERとPBR
PERは9.87倍、PBRは1.28倍と、PBRは1倍を超えてます。バフェット買いで株価が上昇したことに起因しているのでしょうか。評価〇
6、自己資本比率
自己資本比率は27.4%とターゲットラインに届かず。総合商社は投資案件も多く、負債が多くなりがちです。評価△
7、有利子負債倍率
有利子負債倍率は1.32倍。かなり積極的に投資活動を行ってますので、有利子負債は相応にあります。ちなみに流動比率は121.49%です。評価△
8、利益剰余金÷総資産
利益剰余金を総資産で割った数字は26.9%とターゲットラインに届かず。評価△
最後に配当利回りは
配当は上記したように、2021年3月期が予想通り年間88円とすると配当利回りは3.32%となります。総合商社の中では配当利回りは少し見劣りしますが、十分な高配当銘柄ですね。今後も増配が期待できます。
総合商社の中で配当利回りは見劣るものの健全度はピカイチ
さて、アラカンの「高配当銘柄ポリシー」に基づき、伊藤忠商事を分析してみました。総合商社はどうしても投資比重が高くなってしまうので、有利子負債が高くなりがちで、財務的には優秀とはいえない数字になりますね。
ただ、伊藤忠商事はROEが10%を超え、稼ぐ力が大きいのと、事業セグメントが良く分散されています。かつ株主還元意識の高いという点からも、今後とも増配も期待できます。
全体的に配当利回りが高い総合商社の中で、伊藤忠商事の配当利回りは少し見劣りしますが、企業の健全性という点では一番かと思われます。(2021年度の最終利益でもナンバーワンになりそうです)
当面はSBIネオモバイル証券の定期買い付け銘柄として一株づつ買いためていくつもりですが、タイミングをみて単元化することもありかなと考えてます。
それでは、また。